創作小説 煙草を吸う女 ②

教室で茜と会った。
「昨日はどうだった」
「つまんなかったよ」
「だろうね」
「集まりには来ないの?」
肩をすくめた姿は大人びていた。年上の女と話しているような興奮を覚えた。顔が赤くなっていたかも知れないが、気付かれても構わなかった。
「わたしの家で飲み会やるんだけど、よかったらどう?」
必ず行くと約束した。場所を聞くと、大学の近くだった。
家に行くには、坂道を通る必要があった。急な斜面でだったが、苦にはならなかった。到着した頃には会は始まっていた。床には空き缶やスナック菓子の袋が散らばっていて、彼女はビールを飲みながらはしゃいでいた。部屋は十畳の一間だった。家具はピンクを基調にしていて、ベッドやカーテンからは甘い香りがした。床には男たちが座っており、茜はベッドに腰掛けるか立っているかで、床に腰を下ろすことはなかった。
「一緒にやろうよ」
そう言ってわたしを座らせた。缶や袋に混じってトランプが置いてあった。カードを集めて一枚ずつ配った。インディアンポーカーというゲームだった。手札を見ないで額の上に固定し、1番小さい数字を持っていると負けになる。一度だけ手札は交換できる。他の参加者の数字を見て、自分のカードを予測するのだ。負けるとウオッカを飲むという決まりで、わたしが来る前にも盛り上がっていたらしい。男たちは赤い顔をして足がふらついている。素面でいるのは茜だけだった。
わたしは負け続けた。酒を何度も飲み、喉が焼けた。朦朧とした意識の中で、茜の笑い声だけが聞こえた。飽きた頃には我々は泥酔していた。次に始まったのは王様ゲームだった。彼女は立て続けに当たりを引いた。命令はいつも同じで、彼女の足にキスをするというものだった。王様になるたびに、白く長い足を差し出した。
わたしがキスをする時がきた。跪き、足に手を添える。唇を近づけて行くと、背後から呼び止められた。須藤だった。千円札を一枚出した。足りないならもっと出すと付け加えた。わたしは札をはたき落した。茜は手を叩いて喜び、有沢は「いいぞ!」と叫んだ。
「ぼくが立会人なんだよ」
有沢が言った。にやついていて、おどけた口調だった。彼の態度は気に入らなかったが、茜を見るとどうでもよくなった。彼女はベッドに腰をおろし、足をわたしの方に伸ばした。薄笑いともとれる笑顔だった。その表情で見下ろされるのは快感だった。足に触れると、体温が伝わってきた。唇が触れた。唾液が肌についた。欲情すると同時に敬虔な気持ちになった。歓声が上がって、男たちが囃し立てた。
その後も、わたしたちはあらゆることをした。泥酔するまで酒を飲み、煙草を吸った。男たちは半裸になったし、茜もそれを見て笑っていた。いたずら電話をかけて、家の前を通った人を囃し立てた。夜の三時くらいにインスタントラーメンを食べた。今までで一番美味かった。

 

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